ワインの香りを化合物から整理する⑦ ~ジアセチル、アセトイン~

前回の”マロラクティック発酵(MLF)の基本”に引き続き、MLFによって生じる香り、ジアセチル、アセトインを紹介します。

ジアセチル:ジアセチルはダイアセチルとも呼ばれますが同じ成分のことです。ソムリエ協会の教本の記載ではダイアセチルと表記されています。ジアセチルは乳酸やクエン酸の代謝によって生成します。低濃度では香りに複雑さを与えると言われており、官能的にはバターやチーズ、ヘーゼルナッツ様の香りを示しますが、閾値を越えた量になると、台ふきんを濯がずに置いておいたときのような、ムッとする香りのような腐敗臭に感じられます。また日本酒では「火落ち菌」によって生成される異臭の原因がこのジアセチルと言われています。また2013年化粧品メーカーのマンダムの研究によると30代から40代の男性に多い汗臭の原因もこのジアセチルであると報告されました。↓

世界初!ミドル脂臭の原因物質「ジアセチル」を独自の手法で特定

アセトイン:同様に乳酸やクエン酸の代謝によって生成するアセトインは、ジアセチルの前駆物質であり、酵母によってジアセチルに変化します。構造的にもジアセチルとよく似ています。官能的には乳製品の香りとして言われており、ジアセチル同様ヨーグルト、バター様の香りを持つ香りと言われています。


さて、MLFの行程における新しい醸造技術として、Co-inoculation(コ・イノキュレーション)が注目されています。アルコール発酵用酵母を添加して24~72時間後に乳酸菌を添加するという手法で、行程の時間短縮だけでなく、オフ・フレーバーである4EP、4EG揮発性フェノール(フェノレ)の軽減、ジアセチル濃度の低下などが報告されており、ヨーロッパを中心に導入が進む新しい技術の一つです。

次回はCo-inoculation(コ・イノキュレーション)について紹介します。

ミドル脂臭の原因成分「ジアセチル(ダイアセチル)」の発生メカニズム

出典:男のにおい総研

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

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