最近日本ではブドウを夜間に収穫する「ナイトハーベスト(夜間収穫)」を行うワイナリーが増えています。今回は山梨大学の鈴木俊二先生の論文を参考に紹介します。
ブドウの収穫は日中に行われることが一般的ですが、日中に収穫したブドウの果実は高温による果汁の劣化が起こる可能性があり、温暖化の影響も心配です。これを避けるために見出された栽培技術がナイトハーベストです。ナイトハーベストにより収穫されたブドウ果実は品質が良いと経験上言われているそうです。また高い糖分が保持されていると考えられています。本論文では過去に紹介した、柑橘系の香気をもつチオール系化合物の一種であり、以前ブログで紹介した3-メルカプトヘキサノール(3MH)の生成量の日内変動と実際のワインでの含有量について報告されています。
山梨県甲州市勝沼町の試験場で開花後16週目のシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングのブドウ果汁中の3MH前駆体蓄積量を測定しました。すると日の出付近で最も蓄積し、日中から日の入りにかけて減少することが確認されました。この変動は日周性を示し、品種による差がないことも示されました。
この報告から、実際にワインにしたときに3MH含有量が多くなるのか検証するため、長野県須坂市高山村で収穫されたブドウを用いて実験が行われました。早朝(AM5時前後)と日中(PM0時前後)に、収穫適期のシャルドネ果実を使用してワインの醸造を行ないました。製造されたワイン中に含まれる3MH含有量を測定すると、早朝収穫は日中収穫に比べ3MH含有量が2倍ほど多かったことが示されました。一方、Brixや総酸、pHに違いは見られませんでした。このことからナイトハーベストを行ったワインは柑橘系の芳香の強いワインになる可能性が高いことが明らかになりました。
収穫に労を要することが考えられるナイトハーベストですが、柑橘系の香りを活かした芳香高いワイン造りに役立つ栽培技術であることが考えられます。
日本醸造協会誌/ 2016年111巻10号p.658-663
ブドウの品種特徴香から紐解くナイトハーベストの科学的有意性
鈴木 俊二(山梨大学ワイン科学研究センター)
高畠シャルドネ樽醗酵ナイトハーベスト
高畠町でも最も標高の高い上和田地区の厳選された区画のシャルドネ圃場で、霜降まで完熟を促した黄金色のシャルドネ。最も理想的な状態で収穫されたシャルドネを用いている。
私もブラインドテイスティングで「カルフォルニアのシャルドネ」と答えてしまった熟度の高い素晴らしいシャルドネ。
”BON APPÉTIT, CABERNET SAUVIGNON, CALIFORNIA CABERNET, NAPA VALLEY, SHAFER VINEYARDSでのNight Harvestの風景” (引用元:The Foodinista)
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