中国ワインが含有する生体アミン量の報告

2014年から2016年の間に流通していた中国産ワインの90%(n = 456)の生体アミン含有量に関する大規模な調査結果が発表された。

ワインで頻繁に検出される窒素化合物の一種である生体アミンは人体に悪影響を与えることがあり、特に赤ワインに多く含まれていることが知られている。その一方、中国は世界最大の赤ワイン消費国であるが、生体アミン含有量の基準がない。このことによる健康被害が考えられる。

生体アミンの主なものとしては、トリプタミン、フェニルエチルアミン、プトレシン、カダベリン、ヒスタミン、チラミン、スペルミジンおよびスペルミンがある。ヒスタミン、チラミンが特に毒性が高いことが知られており、ヒスタミンはじんま疹、嘔吐、下痢、腹痛、舌や顔面の腫れ、頭痛、発熱等のアレルギー様反応を引き起こす。チラミンはチーズに多く含まれ、血管収縮作用により、脳血管を収縮させ、片頭痛が発生させることが知られている。

ワイン中にアミノ酸が発生する機序としては、アミノ酸の脱カルボキシル化を介して、大部分の生体アミンが生成され、マロラクティック発酵(MLF)でヒスタミンとチラミンが産生される。つまりアミノ酸含量が高いほど生体アミンの算出が多くなる。

大量の生体アミンを摂取すると、頭痛、心臓動悸、高血圧/低血圧および呼吸困難を含む悪影響が生じ、アルコールと相まって二日酔いの原因になりうる。したがって、ドイツ、ベルギー、フランス、スイスなどのヨーロッパ諸国では、赤ワインで2〜10mgL-1の生体アミン(ヒスタミンなど)の上限が設定されている。

実験の結果、ヒスタミン量がヨーロッパ諸国の基準値を大きく上回るワインが存在した。ドイツの2mgL-1を上回るものが121サンプル、スイス、オーストリアの基準である10mg-1を上回るものが28サンプル存在した。

今後は中国での基準作りが期待される。

Profiling wines in China for the biogenic amines: A nationwide survey and pharmacokinetic fate modelling

Ke R., Wei Z., Bogdal C., Göktaş R.K., Xiao R.

Food Chemistry 2018 250 (268-275)

(参考)世界最大規模のワイン見本市「Vinexpo」の調査

2013年における中国での赤ワイン消費量は1億5500万ケースに達し、世界第1位に。ちなみに2位はフランスで1億5000万ケース、3位はイタリアで1億4000万ケース

引用元:https://thepage.jp/detail/20140210-00000006-wordleaf(アクセス日2018年2月)

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