ワインは数千年に渡る歴史があり、産地の文化を色濃く反映し、更に世界各国で飲まれているアルコールであり、この全世界的なスケールはビールなどのアルコールを遥かに凌ぐものです。またワインはこの100年の間に科学的なアプローチによって更なる進化を遂げています。例えば大量のワインの流通・管理が高いレベルで可能になったことや、腐敗・変敗のリスクを減らし、常に高品質のワインが増えてきました。このことによって、世界中でフランスワインやイタリアワインをはじめとするヨーロッパワインを飲むことができ、日本でも例えばジョージア(旧グルジア)など旧東欧のワインまで飲むことができるようになりました。余談ですが、日本は世界中のワインが揃うアジアの一大拠点として注目されており、我々はその恩恵を受けることが出来ているのです。
ではワイン造りに関しての技術革新は日々進化していますが、ワインの価値はどのように決まっているのでしょうか?ワインの品質?それともブランド?ワインの品質を定量化することは非常に難しいことであり、酸度や糖度やアルコール度数を測定しても、味わいが数値化できるわけではありません。また香りに関しても、いくつかの成分が特定できたとしても、複雑かつ複合的な香りをその物質だけで説明することはできません。結局のところ、人間の主観的な感覚が頼りにされており、多くのソムリエや専門家達によるコメント・評価でワインの価値が決まっていくのです。ロバート・パーカーのような天才的な評論家によってそのワインの価値が数十倍にもなることが起こるのはこういった背景があります。つまり飲み手個々の主観に基づく評価が今も昔も中心なのです。
ではワインに含まれる化合物はどのように評価されているのでしょうか?ワインに含まれる化合物の中で医学的な作用が認められているものひとつにポリフェノールがありますが、これが最も多く含まれると言われているブドウのひとつにイタリアで栽培されるサグランティーノがあります。ただそのポリフェノール量が多いという事実をもってワインの価値が変わるかというとそれはなかなか難しいのが現実です。
ここまでお伝えしてきた通り、ワインは非常に人間的な情緒的な飲み物です。ただその一方で、科学的な切り口が突如役に立つことがあります。例えば香りをもたらす化合物のひとつ"2-メトキシ-3-アルキルピラジン"は青ピーマンやゴボウの香りとして、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランを特徴づけるものとして有名です。このように化合物の香りを覚えることで表現が増すことがありますし、ブラインド・テイスティングで品種を見抜く手助けにもなります。またマロラクティック発酵(MLF)の機序がわかれば乳酸の存在でMLFの有無を類推できることができるでしょう。このように人間的な側面の強いワインですが、科学的な知識は大きな手助けになります。そこでブログを始めてみようと考えたのです。
このブログでは特にワインにおける科学・サイエンスにフォーカスして情報を発信していきたいと考えています。時にワインを情熱的に語ることもあるかもしれませんが、線引きがしっかりできるといいですよね。
では今後ともよろしくお願いいたします。
写真はジェイミーグッドの「新しいワインの科学」とイタリア トスカーナ州の「ル・ぺルゴール・トルテ2011」です。
ジェイミーグッドの「新しいワインの科学」は非常にわかりやすくワインの現在の科学についてまとめられた名著です。是非ご一読ください。
モンテヴェルティーネは大変エレガントでピノ・ノワールを思わせるサンジョベーゼを造ります。醸造家のジュリオ・ガンベッリの最後のVTはこの2011年です。造り手は死んでもワインは残るのです。
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