サグランティーノの強いタンニン、プロアントシアニジンとは?

イタリア トレント大学からの2021年の研究報告です。

プロアントシアニジンなどの縮合型タンニンは、人間の健康および食品の品質に大きな影響を与える重要な成分である。これらはワインだけでなく、お茶、ベリー、リンゴなどの果物、芳香性のハーブなど、植物の多くに大量に含まれている。

赤ワインの渋味/収斂性の主成分は、ブドウの種子や果皮由来のプロアントシアニジンである。その化学構造は、カテキン、エピカテキンなどのフラバン-3-オール(カテキン類)が重合した構造を基本骨格とし、様々な修飾や変換を受けて多岐にわたっている。特に、色調の保持としての機能以外に、高分子色素重合体は味わいの深みや複雑さ・良質の渋味を与え、熟成などを可能とし美味しさを構成する重要な役割を担っている。

今回の研究ではサグランティーノの縮合型タンニンの量とそのプロファイルを、特徴あるタンニンで知られている合計133の市販の赤ワインと比較を行った。これらのワインは2003年から2012年の間に生産された36本のSagrantino di Montefalco、30本のSangiovese / Brunello di Montalcino、17本のNebbiolo、13本のCabernet Sauvignon、13本のTannat、12本のPinot noir、4本のMerlot、3本のBarberaなどを用い、超高速液体クロマトグラフUHPLC-MS / MSによって分析された。

プロアントシアニジンの平均重合度(mDP)の箱ひげ図。mDPの濃度(mol)

結果として、サグランティーノは、カテキン、エピカテキンプロアントシアニジン量が最も高いことが確認され、プロアントシアニジンのmDP※(Mean Degree of Polymerization 平均平均重合度)はサンジョヴェーゼ(5.6±1)とタナ(6.4±1)と共に最も高いmDP(6.9±1)を示した。カベルネソーヴィニヨンとメルローの国際品種は、mDP 3.6(±0.6)と3.7(±0.3 )であり差があった。

※mDP(平均重合度)は何個の分子が重合して1つの分子を形成しているかを表す指標です。タンニンのmDPとワインの渋みの官能評価に相関性があることが分かっており、渋みの評価指標として用いられています。

フロログルシン分解反応前の遊離モノマー(フラバン-3-オール)濃度の差し引きによるmDP値の比較。mDPの濃度(mol)

mDPが高いワインは、熟成によるより長い変化が許容できる傾向にあり、ワインメーカーはこの特徴を理解する必要がある。中でもサグランティーノは最も高い値を示した。

タンニンのmDP値、没食子酸やエピガロカテキンには「ドライなど収斂性を表す表現」と正の相関があることが過去の研究で報告されている。今回の研究の結果によりサグランティーノの収斂性は以下の特性があると推測した。

・ 高いmDPが示され、「ドライ」な収斂性があることが示された

・高いエピカテキン量(および一般に単量体のフラバン-3-オール)は、その収斂性および苦味を表している可能性がある。

・高いプロシアニジン濃度(サグランティーノは1.2 g / Lで最も高い、2番目は0.8 g / Lでネッビオーロだった)。これも強いタンニンの特性を説明している

【私見】

タンニンは赤ワインの渋み、苦味を示す用語として広く用いられていますが、渋み、苦味は様々な成分によってもたらされていることが分かります。エピカテキンプロシアニジンは果皮から、プロアントシアニジンは果皮、種子から抽出されますので、醸造方法によっても抽出量は変わるでしょう。ワインの渋み、苦味を感じた場合、その原因となる成分を特定することは難しいかもしれませんが、データに基づいて想像してみることは楽しいのではないでしょうか?是非最強のタンニンをもつサグランティーノを試してみてください。

【Reference】

Improving the Phloroglucinolysis Protocol and Characterization of Sagrantino Wines Proanthocyanidins

Panagiotis Arapitsas et al; Molecules 2021, 26(4), 1087; https://doi.org/10.3390/molecules26041087

【参考】mDPなどタンニンについて勉強になります。

ワインにおけるタンニンの渋みの正体~量と質~/奥村 嘉之

https://note.com/mylittleworld/n/ncbc726dc0a5d

【関連ブログ記事】

タンニンの正しい理解 その① (タンニンとは?渋みとは?)

タンニンの正しい理解 その②(アントシアニン、プロアントシアニジン、エラジタンニン)

タンニンの正しい理解 その③(タンニンの成熟、カテキン類、フラボノール)

タンニンの正しい理解その④(品種ごとのタンニン)

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

0コメント

  • 1000 / 1000