ブラインド・テイスティングを科学的アプローチで考える その③「わかっていたのに変えちゃった」ナゼ?

感じていることと考えていることの違い

「ソーヴィニヨン・ブランだとわかっていたのにリースリングに変えちゃった!」

皆さんはブラインドをしたときに最後の最後で回答を変えてしまい、そのことによって不正解になった、そんな経験はないでしょうか?

具体的にはこんなパターンだと思います。
白ワインの香りを採った際にわずかにハーブ香がしました。そのとき一瞬ソーヴィニヨン・ブランだと考えました。しかしワインを口に含むと甘味があり、酸も高い気がする。これはペトロールの香りが採りにくいアルザスのリースリングではないか?と頭に浮かびました。そういえばハーブの香りは弱まった気がする、白い花の香りにも感じられてきた。ペトロール香の少ないリースリングのような気がしてきた!いろいろ悩んでいたら頭がゴチャゴチャしてきたので、直観を信じリースリングにしよう!間違いない!

しかし、正解はなんとサンセールのソーヴィニヨン・ブラン・・・。変えなきゃよかった。

日常的に起きているブラインドあるあるではないでしょうか?では何故このような悲劇が起きてしまうのでしょうか? 

私は感じることと考えることを混同していることがその原因だと考えています。

皆さんはブラインドをする際に、どのタイミングから何のワインなのか、また何の品種なのかと考え始めるでしょうか?スタートして即考え始めるという方、今回のような失敗をしたことはないでしょうか?

ワインを正確に捉えるために必要なことは、このワインが何かを考えるよりも前に、自分がこのワインから何を感じているのかを知ることだと思っています。このワインから何かが発せされているか?、自分がどのようにこのワインを受容し、体が変化しているのかを自分自身で知る必要があるでしょう。ワインは我々の五感に強く訴えかけてきます。そしてその訴えるものが何かを正確に感じることが大切になります。まずは自分が感じたことは感じたままメモすると良いと思います。今回のケースではハーブ香を感じた事実を最終的な判断材料に出来れば良かったと思います。

では次のステップですが、この感じた結果を基にこのワインが何なのか?考えていくと良いと思います。感じつつ考える、考えつつ感じるということは大変難しい作業です。先ほどの例のように頭の中がゴチャゴチャしてしまうと思います。この理由は脳の構造、役割が異なるのです。私はワインからの複雑な情報を論理的に整理するためには、まず感じたことを紙にメモしてみる、そしてこれが何かを考える、このように順番を予め決めておくことが大変重要だと思っています。

仕事を効率的に進める術としてブレインストーミングという手法があります。参加者全員で思いついたアイデアをいろいろ話してみる、散々話していろいろな候補が出たのちに、皆で分類・選定し、可能性のあるアクションを具体化していくという論理的な手法です。この手法がビジネスの場で広く利用されている理由は、人々の頭の中を見える化でき、感覚的なアイデアを抽出でき、物事を整理しやすい利点があるのだと思います。この考え方はブラインドの参考になると思っています。

田崎真也さんの本※では、人間の五感、特に嗅覚を鍛える重要性について述べられています。またブラインドを行うときに脳がどのような働きをしているのか、参考になる記述があります。次回は人間の脳の構造とブラインドの関係について考えていきます。

※祥伝社新書「言葉にして伝える技術」田崎真也

前回:その②「ブラインドが苦手」その理由

次回:その④「右脳と左脳の理想的な使い方」

ブラインド講座:「当てる!実戦型ブラインドテイスティング」

2016年1月10日に行われた田崎真也ワインサロンのブラインドテイスティング大会。このとき私は初の3位になり、優勝は横山武信さんでした。
当スクールにはこの大会がきっかけで受講しました。校長の元場章人先生との記念すべき出会いでこのあとも様々な場面で大変よくして下さっています。
この時の自分のブラインドのスタイルは考える意識が強く、様々なワインを猛烈に練習しないと勝ち抜くことはできないと強く思っていました。

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

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