何故人はブラインド・テイスティングに挑むのか?避けるのか?
ブラインドを嫌う人は少なからずいらっしゃいます。その一方で果敢にブラインドに挑む人もいらっしゃいます。何故なのでしょうか?
日本ソムリエ協会の各資格試験に合格するためにはブラインドは避けて通れません。そのため全くワインを学んだことがない方から、ワイン歴の長いベテランの方、ワインを職業としている方まで同じ条件でブラインドに挑むことになります。ご存知の通り、ワインの知識とは、ワインラベルから産地、生産者、品種、生産年などの情報を基に如何にワインを理解するか、つまりソムリエの方々がお客さんにワインを説明する際に必要な知識ということになります。このようなワインの知識は勉強すれば得られるものですが、ブラインドは違います。平たく言えば、人が感覚的に捉えるワインの特徴と知識を紐づけ、ブドウ品種、生産地域、生産年を特定することが必要になります。普通の人は決して行うことがない五感を用いた試験であり、人間の本質的かつ高度な能力が要求されます。
そしてこの試験に挑んでみると明らかになることがあります。それはブラインドの得意と思う人と苦手と思う人に分かれるということです。得意と思う人は皆から称賛され、自分の感覚がほかの人に比べて優れているように思い、快感が湧き上がってきます。自分の内面について褒められると嬉しい気持ちになりませんか?「なんでわかるの?あなたは素晴らしい感覚の持ち主だね!」なんてことを言われると日常で感じることがない喜びを感じるでしょう。多くの方は更に賞賛されるべく努力を重ねます。そしてブラインドの深淵な世界に迷い込んでいきます。
一方、苦手と思う人の多くはブラインドでの結果に失望し、自分の感覚が人より劣っているのではないか?と思い込み、心が傷つくでしょう。甲州をシャルドネと答えてしまったとき、ピノ・ノワールをカベルネ・ソーヴィニヨンと答えてしまったとき、その闇は深くなっていきます。そして自分自身を信じられなくなってしまったときにはこの試験は耐え難い苦痛になります。飛べない跳び箱に挑む体育の時間の憂鬱さのようです。苦手と感じた人は二次試験の終了と共にブラインドから離れていきます。「ブラインドなどしない方がワインは楽しい」、きっとそう仰るでしょう。
ブラインドの優劣は感覚では決まらない
私はブラインドでの得手、不得手と思うことは、その人の持つ感覚的な優劣、まして嗅覚や味覚の感度で決まるわけではないと思っています。人間には個体差なく刺激を捉える感覚器、受容体が備わっており、そこに優劣はありません。もちろんいくつかの刺激に対する個人差(遺伝子的な欠損により特定の香りに反応しない)や病気や身体的な影響(例えば鼻腔の変形など)はありますが、健常であれば大きな影響はありません。
そもそもブラインドは、感じること、考えることを明確に区別する頭の整理が極めて重要だと考えています。私はこのことに気付いてから視界が一気に広がりました。苦手と感じている人はこの点が上手く出来ていない可能性があります。このポイントを整理できればブラインドを苦手だと感じる人は少なくなるのではないか?と思っています。
この詳細はまた次回詳しくお話しようと思います。
2015年3月28日に行われた”第2回アカデミー・デュ・ヴァン杯” 私はこのとき始めて決勝に進出することが出来ました。ここに映っている方々は今でこそ共に切磋琢磨している仲間ですが、この時は遥か彼方に見えていました。
この時の優勝は和田さん(左から3番目)、準優勝は横山さん(左から2番目)、第三位は大倉野さん(右から3番目)、第四位は私(右から2番目)、第五位は鈴木綾子さん(左)でした。ずっと企画、運営をして下さっているのが吉田さおり先生(右)です。
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