2017年12月オーストラリアのアデレード大学から日本人研究者による報告。
ワインの品質は、ワインの醸造に携わる専門家が分析的なアプローチにより品質を評価しており、本質的な特徴で判断されている。またワインの品質の評価はコンクール等で等級が決められることが多いが、これはワインの専門家によってワインの品質についての定義が定められ、その定義に合致するかどうかで価値を測り、場合によっては数値化しランクが決められている。
その一方でワインの品質を客観的な定義だけで測定することは難しい。これを補うために専門家は品種個々に特異的な官能特性を品質評価の指標にしている。例えば、果実の特徴、色、質感による評価では、高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズのワインは関連性があり、一般的にオーストラリアの専門家は「High flavor intensity」のワインを高品質と捉えている。同様に、リオハやローヌの赤い果実の特徴を持つワインは、スペインとフランスの専門家によって高品質のワインと評価されている。ワインの官能特性は非常に複雑だが、消費者の購買欲求にマッチすることがあるかもしれない。例えばカベルネ・ソーヴィニヨンのコーヒー、チョコレート、木の香り、シャルドネのオークの香りであったりする。このようにワインの品質とはワインの本質的な要素、そして品種の官能特性によって総合的に評価されている。
ではブドウ自体の違いはワインの品質の評価に影響を与えるのだろうか?この研究の目的は、アルコール発酵後のカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネのワインが、専門家のワインの品質評価にどのように影響するか検討することであった。研究は評価者による記述的分析、専門家による品質評価、および多変量データ分析によって行われた。
ワインは、カベルネ・ソーヴィニヨン(2013-2015)およびシャルドネ(2015-2016)から各品種ごと年間25サンプルを採取され、南オーストラリアのワイン生産地域から収穫されたブドウで生産された。マロラクティック発酵(MLF)は行わず、樽への接触は行わない。またpHの調整も行われていない。
ワインは、訓練された評価者によるAttribute sheetを用いた記述分析を用いて三重にプロファイリングされ、ワイン生産者によって事前に定められた品質定義に基づいた分類作業が行われた。データは、標準偏差分析(CVA)および多次元尺度法(MDS)を使用して分析して得られたスコアを一般化プロクラステス分析(GPA)した。
結果として、カベルネ・ソーヴィニヨンは生産地域別の差が確認され、品種の官能特性が地域、ヴィンテージごとに関連していることが確認された。また専門家による品質基準ごとの一貫した分類がなされていた。
一方対照的に、シャルドネは官能特性と品質基準の一致が見られず、専門家が品質を区別することが出来なかった。これはシャルドネの品種特性がワインに反映されておらず、ブドウや発酵に由来していない可能性がある。カベルネ・ソーヴィニヨンには色と質感を決定づけるポリフェノールが多く存在しており、ワインの品質評価に大きく貢献していた。これは収斂、ストラクチャー、タンニンを記述した専門家が高い品質と評価する傾向にあった。
シャルドネの品質評価は、樽の要素が大きく関係していることが報告されており、今回の結果はシャルドネのブドウの品質がワインの品質に影響していない可能性があることを示唆している。今後は、シャルドネのようなニュートラル品種ではなく、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴェルツトラミネールなど特有の品種特性のあるブドウで検討を行うことにより異なる結果が得られる可能性がある。
Sensory profiling and quality assessment of research Cabernet Sauvignon and Chardonnay wines; quality discrimination depends on greater differences in multiple modalities
Food Research International
Volume 106 In progress (April 2018) Pages 304-316
Jun Niimi, Paul K. Boss, Susan E.P. Bastian
(参考)研究を発表したアデレード大学。オーストラリアでのワイン醸造研究の中心を担う。
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