気候変動はワインのテロワールのコンセプトに大きな影響を与えている。平均気温の変化によって、季節の長さに影響を与え適応するブドウ品種も変わる。ワイン造りにおけるブドウ栽培期間は地域によっても異なるが、平均して170〜190日程度でなければならないと報告されている。平均温度とは別に極端な温度上昇は、作物の生育、収量および品質に悪影響を及ぼす。特に、2.5℃ 未満の温度は、植物の成長に悪影響を及ぼし、35度以上の極端な気温は、ブドウの発色およびアントシアニンの成熟に悪影響を与える。
そこで将来の気候変動下でも、適切なブドウ栽培を行なうワイン醸造者への支援を目的に、定性的(土地評価)と定量的(シミュレーションモデル)アプローチを組み合わせたハイブリッド土地評価システムの開発が行われ、将来の気候変動モデルが開発された。評価が行われたのはイタリア南部カンパニア州の "Valle Telesina"である。約20,000 ヘクタールのこの地域は、土壌の空間的な変動が大きい複雑な地域であり、この地域ではブドウ品種アリアニコを用いた高品質なワイン、DOCGタウラージが造られている。
シミュレーションの結果、2010-2040年の間にアリアニコの栽培に適した面積の41%は灌漑が必要になると予測された。また2100年までに、アリアニコの栽培に適した地域が減少し、この地域でアリアニコ栽培を行うメリットが得られなくなると予測された。
2040年以降"Valle Telesina"でワイン造りを行っていくためには、新たなブドウ品種の導入や灌漑設備の設置が必要であり、地方行政による支援が必要になると結論付けられた。
〈関連ブログ〉
Reference:A dynamic viticultural zoning to explore the resilience of terroir concept under climate change
Bonfante A., Monaco E., Langella G., Mercogliano P., Bucchignani E., Manna P., Terribile F.
Science of the Total Environment 2018 624 (294-308)
(参考)イタリア南部カンパニア州の "Valle Telesina"
Valle(谷)に囲まれたTelesinaの街。
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