自然派ワインとは何か?

最近は自然派ワインが流行っていますが、自然派ワインとは何でしょうか?自然なワイン、また不自然なワインがあるということでしょうか?ワインのプロモーションやマスメディアで用いられている”自然派ワイン”の用語の定義は曖昧であり、消費者によってイメージが異なるでしょう。ここでは大きく栽培と醸造に分けて自然派ワインを整理してみたいと思います。

フランスに代表される法的な品質基準のある国においては、自然派ワインの認証を得たワインが存在します。低農薬での有機農法(リュットレゾネ)、無農薬での有機農法(ビオロジック)、更にビオロジックの考え方に加え、植え替えや剪定、接ぎ木など様々な農作業を、月や惑星の運行に則して行い、プレパラシオンと呼ばれる自然の物質から生成された調合剤を畑に散布するビオディナミと大きく3段階に分けることができます。自然派の認証はフランスのエコセールが有名ですが、最近はビオディナミの認証を行うビオディヴァン(画像参照)、デメテールがあります。厳しい地質調査があり、多くは土壌の改良から行う必要があることから認証の取得には5年から10年の月日がかかる場合があります。近年はボルドーのシャトー・ポンテ・カネ、シャンパーニュのフルーリー、レクラパール等多くの造り手がこの認証を受けています。

醸造においても自然派ならではの取り組みが行われています。例えば酵母は培養酵母でなく、野生酵母を多く用いることがあります。また亜硫酸の添加は極力抑えるかまたは無添加で造る生産者が増えています。白ワインにおいては長い期間果皮とのマセレーションを行い果皮からの抽出を多くし、更にノン・フィルターで仕上げる造り手もいます。結果的に果皮や果実からの成分が多く、色素の変色などを伴いオレンジ色に仕上がるものがあります。最近ではこれらをオレンジワインと呼んでいます。また、発酵、熟成過程において、古代から用いられてきた土壺(アンフォラ、クヴェグリなど)を用いる生産者がいます。ジョージアやポルトガルのように伝統的に土壺を用いてきた地域がある一方で、新たに土壺を用いる生産者は増えています。

このように自然派ワインと言っても様々な取り組みがあります。個性的なエチケットやオレンジ色のワインを自然派ワインと考えている人が多いかもしれませんがそうではないのです。自然派ワインブームと呼ばれて久しいですが、自然派ワインを正しく理解して楽しみたいですね。

(参考)ビオディヴァンの認証マーク。

ビオディナミの生産者による組合の認証。ビオディナミのガイドラインに則って栽培と醸造が行われていることを証明している。

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

0コメント

  • 1000 / 1000