ワインラヴァーなら誰もが気になるワインの保管方法の赤ワイン編。前回のブログで紹介した白ワインの報告と同様に、2018年に山梨大学、寺田倉庫の共同研究として赤ワインについて報告されました。
白ワインに比べて赤ワインは熟成タイプが多く、赤ワインを長期熟成させる方は多いでしょう。ワインを熟成させる目的とは、ワインの基本的な個性を生かしつつワインに複雑性や円熟味を加えることだと考えられています。そしてそのワインの熟成温度は一般には10度~15度が最適と言われており、ソムリエ協会では12~15度での保管と定義されています。一般に低温状態では熟成が進まず高すぎると化学反応を助長し品質低下のリスクが生じます。日本の四季による寒暖差による温度変化はワインに影響すると考えられ、今回の検証が行われました。
本研究では①4℃の冷蔵庫、②14℃ 湿度70%のワインセラー、③35℃のインキュベーター、④空調管理のない倉庫の4条件で比較を行いました。④は最高温度31.2℃、最低温度6.7℃、最高湿度93%、最低湿度29%でした。比較に使用したワインはA:2011年フランス ボルドー、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、プティヴェルド主体のワイン、B:2011年フランス ローヌのシラー、C:2013年のフランス ボルドー(原著ママ:ブルゴーニュ?)のピノ・ノワールでした。保管期間は1,3,6,12か月保管し、いずれの環境でも光は遮断し横倒しで保管しました。
結果の傾向を大まかに要約すると以下の通りでした。
(外観)
色素パラメータ(color hue)の値はすべてのワインにおいて、温度の高さと色素パラメータの値の高さが相関していた。一方アントシアニン量は温度の高さと相関して減少した。また35度のワインでは褐色度が強くなった。
(香り)
アーモンドの香りのするフルフラールは、35度保管において保管期間の経過とともに著しい増加が確認された。フルフラールは高温劣化の判断基準として有用であることが考えられた。ピノ・ノワールは、酢酸エステル類、特にイソアミルアセテートなどの芳香成分は、保管温度が高いほど減少が速かった。
(味わい)
ソムリエによる官能評価の評点は、②14℃、①4℃、④室温、③35℃であり、3種のワインは類似した結果を示した。保管前17.2点であったものが、④室温では10点、③35℃で7.0点まで減少した。①4℃保管は酸を強く感じる、タンニンはとがった印象に感じられる、②14℃は香りに複雑味がある、成分変化が少ない、香味が効果的に変化した。③35℃は酸化臭、豆臭、果実味が損なわれている、明らかな劣化で飲むことも困難であるといった結果となった。①4℃は②14℃に近い評点であったが、複雑性や広がりに欠ける、フルーツの香りが高く保たれる結果となった。
(総評)
① 4℃、②14℃での成分変化が少なく保管状態を保つことが可能であることが示されました。これは白ワインと似た結果でした。①4℃に比べて②14℃は官能評価の結果より、12ヶ月の熟成で、優れた熟成につながることが示唆されました。③35℃では明らかな品質の劣化が確認されました。またフルフラールの増加、アントシアニン量の減少が確認されました。
(私見)
赤ワインは有機化合物の成分含有量が白ワインより高いため、温度により変質するリスクが高いことが示唆されました。特に常温環境下よりも温度の低い環境の方が保管には適しているのでしょう。また個人的な経験則ですが、抜栓後の赤ワインは冷蔵庫での保管がお勧めです。今回の実験の①4℃で示された通り、状態変化が明らかに少ないことを実感しています。これは低温では酸化反応が起きにくいことからも推測できます。
引用
保管状態の違いが赤ワインの成分及び品質変化に及ぼす影響
窪田さおり、乙黒美彩、岸本宗和、是川泰之、中野善壽、森覚、柳田藤寿
日本ブドウワイン学会誌 2018
凄すぎる4階フロア突き抜けのセラー。Del Frisco's Double Eagle Steakhouse Chicago。
2014年にWine Spectator's Award of Excellenceを受賞しています。いつか行ってみたいものです。
chicagotribune.comより。
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