2018年イタリア サレント大学からの研究報告。
ワイン生産における水の確保と利用は、重要かつ必要不可欠であり今後のワイン生産に重要なファクターである。また、イタリアは世界一のワイン生産地域であり、407の地域がAOPワインとして原産地証明されている(2017年)。
近年、消費者は自然と共生した環境下で造られたワインを評価する傾向にあり、高い対価を支払うという報告がある。また他の産業と同様にワイン産業においてもサステイナビリティ(持続可能性)が求められており、天然資源の利用、温室効果ガスの排出抑制など、生態系に配慮したワイン造りが必要である。
イタリアでは、407の地域で法規制が行われ、その範囲はワイン総生産の40%にも達している。そこで今回の研究では、イタリアワインの水利用にフォーカスして、ウォーターフットプリント(WF)という尺度を用いて経済的な視点から検証する。ワインにおける水資源の利用では、例えば1杯のグラスワインを造るために、世界平均で109リットルの水資源を使用しており、イタリアでも88リットルの使用が報告されており莫大である。
ウォーター・フットプリントとは、モノやサービスを消費する過程で使用された水の総量を図る概念である。ウォーター・フットプリントは3つの種類で定義される。
グリーン・ウォーターフットプリント:土壌に貯められ、植物を通して蒸発するという新鮮な地表水、地下水に関するもの。ブドウ栽培に関係する。
ブルー・ウォーターフットプリント:商品の製造で使用されたり、人の体に入ったりする地上及び地下水(河川水)に関するもの。灌漑農業や産業、家庭での水利用に関係する。
グレー・ウォーターフットプリント:家庭雑排水などの汚染された水を特定の水質に戻すために必要な水に関するもの。下水管を通って直接廃棄される排水や土壌で濾過されながら間接的に浄水される排水などと関係する。
この指標を基に、起源のはっきりした伝統地域65のアペラシオンの調査を行った。まず明らかになったのは、ワイン用ブドウ栽培に必要な水利用(栽培に必要な水量/栽培面積)である。そして、最も水利用が効率的な上位5つのアペラシオンは、エトナ(シチリア州)、ドルチェット・ダルバ(ピエモンテ州)、ネッビオーロ・ダルバ(ピエモンテ州)、フリウリ・コッリ・オリエンターリ(フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州)、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(トスカーナ州)の順。圧倒的な差で水資源の効率性はエトナが高いという結果となった。文献中には火山性土壌の肥沃さと気候の優越性について触れられている(画像参照)。
一方、水資源の経済利用(年間生産でのワイン価格/ワイン製造に必要な水量)ではバローロ(ピエモンテ州)が最も高く、次いでブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(トスカーナ州)、ヴィノ・ノーブル・モンテプルチアーノ(ピエモンテ州)、アルト・アディジェ・ズートティロル(トレンティーノ-アルト・アディジェ州)、バルバレスコ(ピエモンテ州)であった。これは市場価格と水資源の有効活用が反映された結果であると考えられる。
今後は生産者が効率的な水利用を努め、無駄な土地利用を無くし経済性を高めることがイタリアワインの将来を導く鍵となるだろう。今後もウオーター・フットプリントによる評価の更なる進歩が必要である。
Water footprint and economic water productivity of Italian wines with appellation of origin: Managing sustainability through an integrated approach
Pier Paolo Miglietta et al.
Dipartimento di Scienze dell'Economia, Università del Salento, Via per Monteroni, 73100 Lecce, Italy
水効率が高いエトナDOCについて、シチリア州エトナ山周辺の気候。ネブロディ山脈によって、雨による湿気が留まります。水分は土壌の下の溶岩に吸収され、生育期にブドウの根に利用できるようになります。(Wine -- Mise en abyme by wineORL)
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