スーパーなど小売店で起こる白ワインの品質劣化とは?①

2021年に報告されたカスティーリャ・ラ・マンチャ大学からの白ワインの保管環境、特に温度、光、コルク別の環境変化に対するワイン中の成分の変化についての研究報告です。

【研究の背景】

白ワインの多くは熟成を目標に製造されておらず、消費者の多くは瓶詰めが行われた後、短期間で消費している。不適切な環境での保管は酸化を促し、揮発性化合物によるフルーティな香りを変質させる。白ワインは温度、光、クロージャー(栓)を通過する酸素などの保管条件によって、品質は大きく変化する。酸化は白ワインの品質を大幅に低下することが報告されているため、生産者は窒素などを用いて酸化を防止している。

またワインのクロージャー(栓)は進化しており、多様な種類が存在するが、天然または凝集コルクで密封されたワインよりも低品質なコルクは香りと色の酸化特性が早くなることがある。スクリューキャップは瓶詰時の外観および香りを維持しやすい特性がある一方で、還元状態に陥りやすい。

ワインの保管温度は化学変化の反応速度に重要な影響を及ぼす。温度が上昇すると、化合物の分子の移動スピードが速まり、化合物同士の衝突により化学変化が加速する。25℃の環境下で24か月保管されたアルゼンチンのマルベックは15℃で保管されたものに比べてドライフルーツの官能的な評価が高まり、25℃で9カ月保管されたソーヴィニヨン・ブラン、シュナン・ブランによる白ワインはより褐変したという報告がある。

ワインは、熟成、輸送、保管、販売などで温度変化にさらされる可能性がある。特にスーパー、小売店などでは温度変化に加えて照明の光にさらされることがあり、光の波長によっては白ワインの色素が増加し色調が変化する可能性がある。褐色などの着色ボトルを選択すると、光への露出を減らすことができるが、消費者のニーズを反映させ、多くの白ワインは透明なワインボトルに詰められている。

【研究目的】

今回の研究は、スペインで幅広く栽培されているヴェルデホ種を用いて1年間の品質の変化に関する実験を行った。白ワインの品質の変化を、露光量、温度別に二群に分けた。ひとつめは小売店などの条件下を想定し、色温度は6000k、波長は483nmの白色LED、周期的な光の変化をもたらすために照明が点いた時間を12時間、暗闇を12時間に設定した。温度は24±2°Cで管理された(以下省略し小売店群とする)。もうひとつの群は最適なセラー条件での環境を想定し、光はなく暗闇、温度は12°Cで一定にした。(以下省略しセラー群とする)。更に異なるコルクを3種類用意して、透明なガラス瓶で瓶詰めした。コルクは天然コルクによるスーパー(SUP)、品質の劣るサード(THR)、天然コルクの副産物で作られた凝集コルク(MGR)であった。

では次回は研究結果を紹介します。

関連過去ブログ

(白ワイン)保管条件の違いがワインにもたらす影響についての研究


Reference: Evaluation of the Storage Conditions and Type of Cork Stopper on the Quality of Bottled White Wines

M. C. Díaz-Maroto, M. López Viñas, L. Marchante, M. E. Alañón, I. J. Díaz-Maroto, M. S. Pérez-Coello

Molecules 2021, 26(1), 232

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

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