ブラインドの最大の敵は何でしょうか?それは間違えなく思い込みです。心理学では認知バイアスと呼ばれます。ブラインドで間違える原因は、そもそもその品種を知らない場合を除けば思い込みがほとんどの要因だと思っています。
ブラインドでは自分に生じる認知バイアスとの闘いと言っても過言ではないと思っています。自分にとって好都合な情報を優先したり、自分の先入観の裏付けとなるような情報だけを集めようとすることは「確証バイアス」と呼ばれます。例えば、テンプラニーリョのアメリカンオークからのココナッツミルクの香り、レーズンのような甘い香りがあったとき、前日に飲んだジンファンデルを思い出し疑問を感じつつも回答してしまう、なんてことがあります。白ワインに気泡が生じていただけでニュージーランドを疑う方もいらっしゃるのではないでしょうか?好都合な情報だけを集めることで、思い込みの度合いが強まり、正しい情報を見逃してしまうということです。
「失敗バイアス」という言葉もあります。たまたま前日に品種を外してしまったとして、それが原因で合理的な判断ができなくなることです。また「ハロー効果」は目立ちやすい特徴に引きずられて他の特徴が見えにくくなることです。外観の色合い、ハーブ香、樽香など一つだけの要素で結論に導いてしまうようなことはブラインドあるあるではと思います。
自分自身が認知バイアスの影響を受けやすいと思っている方はいませんか?例えば「この人はイタリアワインが好きだからイタリアに違いない」「さっきシャルドネが出題されたからもう出題されないはずだ」「さっきメルローと回答してしまったから他の品種を書いておこう」など陥りやすい罠です。ブラインドを行う皆さんに必ず心がけて頂きたいことがあります。
バイアスに陥っている状態で正答してもそれは自分の成果とは言えません。極力排除しましょう。
このような認知バイアスに惑わされないようにするために、以下のような解決策があると考えています。
「人の意見を聞く」
人の意見を聞くということは、自分とは違う視点の意見を聞くこということで、客観的な視点を得ることに繋がります。自分が当たり前に思っていたことが覆され、正しい検討を行うための材料を得ることができるのです。反対意見も積極的に聞き入れ、全体的に検討し直すように習慣づけることが大切です。
「批判的視点をもつ」
自分が考えていることに対し、常に批判的な考えをもち、前提を疑うような癖をつけると認知バイアスにかかりにくくなります。例えば、「このワインは香りが全くとれない、欠陥品だ」と決めつけるのではなく、「香りがとれないということは特徴のない品種、あるいは醸造工程で香りを抑える手法を行っているのではないか?」と考えるなど前提を疑うように心がけましょう。余談ですが、ミュスカデやアリゴテなどは特徴のないことが特徴である品種の一例です。
「事実と意見を分ける」
曖昧な表現は認知バイアスを招きやすくします。事実と人の意見は別物と考え、分けて考えるようにしましょう。例えば「この品種は残糖が感じられることが特徴なのです」という説明を受けたとします。この時にそれに引っ張られず、残糖はどれくらいの量なのか?酸とのバランスはどうなのか?本当に共通した品種の特徴と言えるのか?実際に数値を確認し、要因を分析して結論を出すようにすることで、認知バイアスに陥らず、正しい判断をすることが出来ます。
「判断軸をもつ」
自分の判断軸をもつことは、認知バイアスに陥らないために必要な心構えです。
例えば、私が提案する「クンクン・メソッド」では外観、香りだけで仮説を立て、味わいで検証するというプロセスを事前に決めておくということも判断軸を持つことの一つの方法になります。曲げることのない判断軸を常に持つように心がけることで、正しい判断を下す結果に繋がって行きます。
私は認知バイアスを防ぐために、思い込みに惑わされてないか常に自分に問いかけています。また自分のテイスティングシートにヒントがないか何度も確認します。外観も一度だけでなく時間が経った後に再度検証します。客観的な立場でワイン、そして自分自身を見つめることがとても大切だと考えています。
では認知バイアスを克服するとどうなるのでしょうか?その時人間に備わる奇跡の第六感、直観/閃きが訪れます!これはまさに神様からのギフトなのです。では次回はこの直観/閃きについて話したいと思います。
Reference:認知バイアスに陥らないためには?起こる理由や対処法を紹介(すべらないキャリア編集部)https://news.mynavi.jp/article/20201031-1430396/
2021年2月8日 第1回ブラインドテイスティングNo.1グランプリ(B-1グランプリ)
認知バイアスとの闘いに勝利して最終決勝までたどり着いた5名。ブラインドは隣の方と戦っているようで自分自身と戦っているのです。とても面白い大会でしたので、是非You Tubeからご視聴ください。
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