保管環境がロゼワインに及ぼす影響とは?

カリフォルニア大学デービス校ブドウ栽培・醸造学部からの2024年の研究報告です。

ロゼワインは、色合いが消費者の嗜好に大きな影響を及ぼすため、多くのロゼワインは透明なボトルに瓶詰めされています。しかし、瓶詰め後のワインは紫外線や可視光線、温度変化にさらされることで、品質が劣化する可能性があります。これまでの研究では、白ワインについてはボトルの色が品質保持に与える影響が広く報告されてきましたが、ロゼワインについての研究は限られているため、本研究ではロゼワインの品質に対する保存条件(照明、温度、ボトルの色)の影響を研究しました。

ブドウ品種はグルナッシュ、ピノ・ノワール、ジンファンデルを用いました。ボトルは透明、アンティークグリーンです。照明は暗所、LEDライト、蛍光灯の3条件です。温度は12°C(セラー温度)、22°C(室温)の2条件です。

結果として、保管期間中に高温(22°C)および蛍光灯下では遊離SO2の顕著な減少が見られました。高温と蛍光灯の組み合わせは酸化を促進し、遊離SO2の消費が加速しました。蛍光灯下ではLEDライトや暗所よりも遊離SO2の消費が確認されました。ボトルの色合いは遊離SO2の消費に対して影響を与えませんでした。

CIE L*a*b* (CIELAB) の基準での分析において、どの条件においても明度(L*)は減少しましたが高温での保管は特に変化が顕著でした。これは酸化によって色素濃度が増加しました。保管期間が延びるにつれて、グルナッシュは明度の変化が少なくなり、ピノ・ノワールとジンファンデルでは明度が増加しました。

赤色成分(a*)は保管期間中に減少し、特に高温および蛍光灯下での減少が顕著でした。酸化とアントシアニンのポリマー形成の促進が原因と考えられます。高温および蛍光灯の条件では赤色成分の減少を促進し、暗所および低温条件では影響が少ないことが確認されました。

黄色成分(b*)はフラバン-3-オール類の酸化により増加しました。高温での保管では特に顕著でした。フラバン-3-オール類は酸化されやすく黄色成分の増加につながります。

高温および蛍光灯下での保管によって香り成分が変化しました。特に硫黄化合物の減少が確認され、温度と照明条件が香り成分に大きな影響を与えることが示されました。

保管条件が消費者に与える影響を官能評価で確認した結果、高温および蛍光灯下での保管はワインの品質に最も悪い影響を与えることが示されました。特に、色の変化や香りの劣化が顕著でした。

結論として、ロゼワインの保管条件は、ワインの品質に大きな影響を与えることが確認されました。特に、蛍光灯下および高温での保管は、ワインの化学的および官能的特性について悪影響を与えることが示されました。

(私見)ロゼワインは温度や光の影響を強く受け、3か月、6か月といった短い期間でも少なくない変化があることは、販売側のみならず、消費者も知っておくべき重要な情報であると思いました。余談ですが、私が好きなギリシャのドメーヌ ティミオプロスのMacedonia Rose De Xinomavro Domaine Thymiopoulos(下部に紹介します)は褐色ボトルを用いていることを思い出しました。ワインを美しく輝かすボトルを選択するのか、一見地味に見えても将来を考えたボトルを選ぶのか、生産者側にとっては悩ましい問題です。

a)グルナッシュ、b)ピノ・ノワール、c)ジンファンデルの各種条件による遊離SO2の変化を見たグラフ。赤い線-瓶詰め時の遊離SO2。青色の縦グラフは3ヵ月保存後の遊離SO2。斜線の縦グラフは6ヶ月保存後の遊離SO2。いずれの条件によっても時間経過によってワインを守る遊離SO2の濃度が顕著に減少していることがわかる。

Reference: Medina-Plaza, C., DuBois, A., Tomasino, E., & Oberholster, A. (2024). Effect of storing conditions (lighting, temperature and bottle color) on rosé wine attributes. Food Chemistry, 439, 138032.


ドメーヌ ティミオプロスのMacedonia Rose De Xinomavro Domaine Thymiopoulos

クシノマヴロを用いたロゼワイン。大好きなワインのひとつです。

https://www.racineswinesland.com/view/item/000000000383

インポーター:ラシーヌ

希望小売価格:¥2,970(税込)

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

0コメント

  • 1000 / 1000