タンニンの正しい理解 その① (タンニンとは?渋みとは?)

植物には何故タンニンが存在するのでしょうか?成長過程の果実中には高濃度のタンニンがあり、また鋭い酸によってその実を守っています。種子が十分に成長すると果実は美しく彩られ華やかな香りと共に動物を引き寄せます。そして子孫を遠くの地に運ばせるのです。つまりタンニンは植物の子孫を繋いでいくための大切な存在なのです。

赤ワインに特徴を与える重要な成分であるタンニンについて、その役割や効果について4回に分けて紹介します。

タンニンの二つの分類

タンニン (英: tannin) は多くの植物に存在しています。タンパク質、アルカロイド※1、金属イオンと反応し強く結合する特徴があります。水溶性化合物ですが、難溶性の物質を形成する特徴があります(例えばワインの澱)。植物界に普遍的に存在しており、ブドウ以外にもオリーブオイル、ナッツ、ブルーベリー、茶葉、柿などに含まれており、特徴的な味わいを感じることができます。なお、タンニンはポリフェノール(物質内に複数のフェノール性水酸基を持つ物質の総称)の一種でありますが、構造上の名称ではなく、強い結合能力をもつ一部の物質に対する名称です。しかし、ワインにおけるポリフェノールの作用のほぼすべてはタンニンによる作用を指していると考えられています。

タンニンは大きく二つに大別されます。アントシアニン、プロアントシアニジンなどが含まれるフラバノール骨格を持つ化合物が重合した縮合型タンニン、そして、カテキン、バニリン、レスベラトロール、没食子酸やエラグ酸などの芳香族化合物とグルコースなどの糖がエステル結合を形成した加水分解性タンニン(エラジタンニン)の二つに分類されています。

※1:ニコチン、カフェインなどの窒素をもつ塩基性化合物のこと。

ヒトが感じる渋みのメカニズム

タンニンは渋みを感じさせる物質であることはよく知られていますが、ヒトはどのように渋みを感じるのでしょうか?実はヒトはタンニンの味わいから渋みを感じるのではないのです。ヒトの口腔内にはムチンとよばれるたんぱく質によって口腔内の表面にぬるぬるした層を作り保護しています。しかしタンニンが口腔内に入ると唾液中のムチンを中心としたたんぱく質と複合体を形成し、結果としてこのぬるぬるした層を取り除いてしまうため、口腔内の表面から滑らかさがなくなり、渇いて引き締まったように感じるのです。渋いと表されるときに起きているのはこの状態なのです。皆さんも経験したことがあるであろう例を示します。ワインテイスティングの際に吐器にワインを吐き出した際に、吐器の中に粘性のある液体と赤や紫などの塊がないでしょうか?これが唾液中のムチンなどのタンパク質とタンニンが結合して沈殿したものなのです。つまり渋みとは味覚ではなく、歯茎を含む粘膜など口全体で感じる触覚なのです。苦さと混同されるケースがありますが、味覚と触覚を分けて感じ取りましょう。

では次回はタンニンがワインに与える影響について紹介します。

(参考資料)

Wikipedia:タンニン

ワインの味の科学:ジェイミー・グッド (著) 伊藤 伸子 (翻訳) 出版社: エクスナレッジ

新ワイン学 :戸塚 昭(編集幹事) (監修), 東條 一元(編集幹事) (監修) 出版社: ガイアブックス

ワインに含まれるタンニンの一例。

Reference: Wine Folly (https://winefolly.com/review/what-are-tannins-in-wine/)

ワイン・ブログ 情熱とサイエンスのあいだ

ワインに関する科学的研究を、私の超個人的なフィルターを通して、ソムリエのみならずワインラヴァーの皆様にお伝えするそんなブログです。ワインに関しての最新研究やワインサイエンスを通してマニアックなワインの世界を突き詰めたい方々にお役立ていただけると嬉しいです。

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